Italiaイタリア


1861年に近代統一国家として成立するまでナポリ王国などの諸国家がさかえ、それぞれ独自に料理文化が発達したためである。イタリア料理の多様性は地理的条件も大きく関係している。山があり、草原もあるので農産物、畜産物があり、地中海からの魚介類。地中海性気候を利用したハーブ、オリーブの栽培と料理への利用。ワインは各地で作られ、それを発酵、熟成させるバルサミコビネガーも有名だ。パスタやピザなどの小麦加工品も豊富*1
とにかくイタリア料理の食材の豊富さは筆舌しがたい。

Rome ローマ

「ローマは一日にして成らず」、「全ての道はローマに続く」。世界遺産の町並み、コロッセウム、そしてローマの中にある小国バチカン市国。ローマには日本人ならず世界各国からの観光客が押し寄せる。物価は高い。

ローマの観光地では、あちらこちらにバンを改造したミニスタンドが見られる。横の扉を開けただけで店になるすぐれもの。アラブ系の人がやっていることが多いので、もとは移動式ケバブスタンドと同じアイディアだろうか?
飲み物からお菓子、ホットドックまで売っている。しかし値段はスーパーの3倍くらいはする。ペットボトルのジュース300円!
右はおしゃれなジェラート屋。観光客もイタリア人もジェラートは大好き。味も20種類くらいあって迷う。カプチーノ味やコーヒー味が個人的に好き。
左、ローマのコロッセウム”闘技場”。ローマは各地を征服しながら、文化を伝えた。料理、ワイン、劇場、温泉など。地中海からライン川を登っりながらそれを伝えヨーロッパの基礎を作ったと言われる。
闘技場はスポーツだけでなく、剣奴を戦わせたり、キリスト教徒をライオンに襲わせたりしたから血なまぐさい場所なのだ。今は朽ち果て、ライオンはいないが親戚のネコがすんでいた。
日本でも少しはやった”パンナコッタ”クリームの粘り気、そして甘さ、さらに上に厚く乗せられたカレメルクリーム。エスプレッソコーヒー無しでは食べられない。ちなみにイタリアでコーヒーというとエスプレッソのこと。しかもかなり濃く。量もカップの3分の1と少量。イタリア人曰くこれでカツを入れて目をさますらしい。
ローマで、最も歴史のあるピザ屋のひとつEST、EST、EST”。シックな店の中では観光客と地元民がピザを楽しんでいる。値段も安い。バンドネオンの演奏も運がよければ聞ける。
右はこの店が始めてローマにもたらしたと言われるPizza Napolitana、アンチョビーの塩気がきいている。イタリアのピザはどこで食べても美味しいが、ローマ以南が美味しいと言われる。日本のピザハットのように色々よけいなものを乗せない。Pizza Marugaria のようにチーズとトマトソース、飾りのパセリも無い、というようなシンプルなものが好まれる。それぞれの具の味が濃く、生地も美味しいのでごまかさなくていいのである。
広島育ちの私も、注文するお好み焼きは”豚、そば、卵”トッピング無し。


Siena シエナ

 
 ローマからバスで3時間でトスカーナにつく。そこに広がるのは自然の森、美しい小麦畑とワインの丘陵地、そして丘の上に立てられた城郭都市。まるで中世にタイムスリップした錯覚を覚える。人々も暖かい。観光客もローマなどに比べてゆっくりした時間が流れる。スローフード運動もここが中心となっているらしい。

シエナの中心にあh扇状に広がったカンポ広場があり、そこを囲むようにカフェが乱立する。ガイアの泉近くは人々の憩いの場となっている。カフェでは人々がゆったりコーヒーを飲んでいる。まさに食の時間を楽しんでいる。(*3参照)
”Gaia”とはギリシャ神話で、母なる大地の神。カオスの娘である。「ガイア仮説」はこの名前からきている。(*5参照)
右は酒のツマミ屋、いのしし肉、燻製類、生ハム、チーズからワインまで、店にいるだけでよだれが出てくる。いのししの頭が店の前にあり、いかにも狩猟民族的なワイルドな店。
シエナのある人気のレストランで、ピザ専門の職人がいて、すごい早さで作っている。ピザの生地を空中で回転させ伸ばしながら薄さと円形を整えていく。ただの演技ではない。

言葉が通じないからと言って、ピザやパスタやラザニアばかり食べるのは悲しい。注文のしかたにはコツがある(*2参照)。肉やパスタ類に飽きてきたらAntipasta"前菜"のビュッフェをお勧めしたい。茹でた野菜、マリネにしたもの、ビネガー漬けにしたものなど、少なくとも10種類は並ぶ。自分の好みのものだけとれる。一皿でいくらという勘定になる。

Firenche フィレンチェ


花の都、町全体が美術館とも形容される美しい町、フィレンチェ。

左、ヴェッキオ橋、アルノ川にかかるフィレンチェ最古の橋、橋に埋め込まれているかわいい家は高級アクセサリー屋、夜になるとライトアップされ幻想的な世界を作る。まるで中世の小道を歩いているような錯覚におちいる。

右、フィレンチェの伝統料理のひとつ、”リボリータ”オリーブオイルのきいたスープにパン粉を入れたスープ、パン粉がスープを吸い込んでボリュームを増す。たぶん家庭で昔食料が不十分で、残っている硬いパンがをつけ込んで食べたのが最初ではないだろうか。
”DUOMO”は中心のドーム教会。町の中心にどでかい建物があるので、どこからでも見える。大きさだけでなくその装飾の美しさに圧倒される。

右、モッツアレラチーズのサラダ。日本のようにちょこっと小さなチーズが乗っているのではなく、
サラダの上に派手に固まりが一個乗っている。自分でバルサミコとオリーブオイルで味付けをする。切り分けるのも自分で。
このダイナミックさがイタリア。チーズに対する感覚も違う。値段も安く、生活のなかに染み込んでいる感じがする。
中央駅から東へ5分のところにあるフィレンチェの中央市場。この周りに安くて美味しいレストランもある。市場の1階はワインやチーズ、ハムなどの加工品。2階は野菜やフルーツなど、乾燥フルーツ(右写真)の種類も数も豊富。
 日本人がアルバイトをしている店もあるので、そこに行くといろいろ教えてもらえる。バルサミコの試飲などもできる。1年ものなどは酢が強いが、10年以上のものになると甘くなっていく。イタリア人はそれをアイスクリームにかけることもあるらしい。
サントスピリト教会の前で出くわした青空市場。トスカーナの農家が車で収穫したての野菜や自分の家で加工した農産物を持ち込む。人々は買いものと共に会話を楽しむ。まさに生産者と消費者の顔が見える理想的な形。スーパーマーケットができる前は全てがこうであったが。
左はトスカーナのワイン農家、収穫から醸造までの作業を写真で紹介している。客と「今年のキャンティは当たり年だよ」などと話している。
 右写真、野菜農家も、トマトペーストやバジルペーストなどを自分の家で加工して売り出す。パスタのソースなどはイタリア家庭料理には欠かせない。


Venetia ベネチア


フランスのプロバンスを抜けて、イタリアのローマの遺跡でたたずみ、シエナ、フィレンチェでトスカーナのワインと田舎の風景を楽しみ、そして水の”都ベネチアへ”、未だに交通手段は全て船を使っている。船に乗せて野菜や食料品を売ってるのはまさにバンコクの”水上マーケット”を思い出した。
水路とゴンドラがここの象徴だが、ゴンドラは新婚旅行やグループで乗るとよい。高いので。普通の観光は”ヴァポーレ”という市民の渡し舟の一日券を買えば十分。入り組んだ町なので必ず迷う。しかし迷路のような路地を迷っているときにかぎって面白いものが見つかったりする。楽しみながら迷うもこの町の楽しみ方である。治安はイタリア一いいので夜に道に迷っても安心。

写真ベネチアの橋とゴンドラと"ピザ・ベネチアーノ"ベネチアのチョリソが入っているピザ。ゴンドラがゆっくり行きかうのを見ながらワインとピザを楽しむ。
右、ヴェネチアガラスのムラーノ島。ガラス博物館はしょぼいが店のショールームがガラス美術館のよう。個人で行ってもガラス工場を見学し職人技を見ることができる。道の途中の水路で野菜を売っているおじいさん。車が無いので、全て船で運ぶ。町が静かでよい。
左、リアルト橋のを少し登った水際にある市場には船に乗せられた野菜や魚が荷揚げされている。イタリア料理はチーズや肉料理だけでなく、海の付近では魚料理が豊富。そこがフランス料理よりも日本人の口にもあう要因のひとつであろう。
魚売り場は常に活気がある。ウナギ、カニ、貝類などさまざまな魚介類が並ぶ。
右、ナスも大きいが、それに負けないくらい大きなピーマン、赤や黄色、これらがイタリア料理に色彩をつくりだす。新大陸から16世紀に持ち込まれ使われる前は無かった、トマトもトウガラシも赤ピーマンも無いイタリア料理とはなんとみじめなものであっただろうか。
右、川の上から見たデュカーレ宮殿。日が落ちた直後のベネチアの町は水上から見るのが一番美しい。もちろん市民の足、水上バス”ヴァポーレ”で。


 *1 パスタはイタリア人にとっては欠かせないもので、さまざまなかたちで食卓にのぼる。たとえば、スパゲティやマカロニをはじめ、小さなパスタの包みの中に肉やチーズ、野菜などをつめたラビオリや、幅広の麺であるフェットチーネなど。パスタにからめるソースも、トマトと赤身の牛、豚、子牛、鶏のレバーなどのひき肉でつくったボロネーゼや、サーモン、マッシュルームのソースなどたくさんの種類がある。

 *2 イタリア人は、子牛の肉、ハム、ソーセージ、サラミソーセージなど種類の豊富な肉類だけでなく魚もよく食べる。チーズはさまざまな種類のものをたのしむ。ピッツァも地方ごとに豊富な種類がある。毎日の食事は普通3品ほどだが、人をもてなしたりレストランで食事をする場合には、前菜からはじまり、パスタ料理、肉や魚のメイン料理がつづき、デザートとチーズでおわる。サラダはメイン料理の後に出されることも多い。食事中のワイン、そして食後のエスプレッソカフェもかかせない。料理はだいたいこのようにコースで注文する。日本のようにパスタと飲み物だけオーダーというのはありえない。ちなみにパスタはイタリアでは前菜である。昼にはよく"Menu turistica"というセットメニューがある。いわゆる定食なので注文しやすい。食堂のセットで1000円〜1500円くらい。

*3イタリア人にとって、おいしい料理を食べることが人生の喜びでもある。とくに客をもてなす場合は、大勢でゆっくりと食事をたのしむ。週末には家族があつまり、何時間もかけて昼食をとる。昔は昼食が1日のメインの食事で、家族が顔をそろえた。しかし、最近では共働きの家庭がふえたことと、昼休みが短くなったため、とくに大都市ではこの習慣がなくなりつつある。従業員20人以上の会社では、カフェテリアなどの施設をつくらなければならない。昼食時間は1時半か2時から。夕食は遅く、北部では7時半ごろからはじまり、南部の地方やシチリア島では10時半ごろになることもある。スローフード、スローライフの原点がここにある。
Microsoft(R) Encarta(R) Encyclopedia 2002.


スローフードについて。
 日本ではスローフードという言葉が氾濫しているように思える。十分に意味を理解しないで使っているように感じられる。イタリアですら、最近使い出された言葉で浸透しているとは言いがたい。私がイタリアにいるときも全くと言っていいほど目にしなかった。だいたいスローフードとは英語だし。
だいたい、日本から見たらイタリアは現代でも十分スローフード・スローライフであるが、さらに求めるところがすばらしい。日本に氾濫しているスローフードという言葉はいくらか商業的な臭いがして、十分意味を理解しないまま使われている気がする。
ただ、ゆっくりした食事の時間をすごせばいいとうわけではない。根底には現代の人間尊重の時代の古典復古”Renaissance”であり、伝統復帰があることを認識しておかなくてはならない。
その概念が薄い、食事の時間をとっても、生活全般が忙しい、ストレスが多い社会では無理がある。だから言葉だけが浮いている気がする。
伝統復古、スローライフ、スローフード、人生を楽しむ概念。それらが一緒になって初めて有機的に機能するものだと思われる。

*5、イギリスのフリーの科学者であるJ.E.ラブロックが1972年に発表し、一般には79年に刊行された著書「地球生命圏?ガイアの科学」で知られるようになった仮説。ガイア仮説とは、地球のような惑星全体をひとつの生命体「ガイア」とみなし、惑星全体があたかもひとつの生命体のようにふるまうという考え方である。つまり、微生物から人間にいたる全生物と、大気や海洋、地殻などの表層環境が有機的にむすびつき、あたかも惑星がひとつの生命体として機能し、進化してきたと考える説である。日本ではドキュメンタリー映画「ガイアシンフォニー」により広く伝えられ、支持者も多い。