食遊記2007中東編


ワン

夜行バスに揺られて、早朝寝ぼけて目をあけると、そこには湖に写る朝焼けの大パノラマ。半分夢かと思いきや、すでにワン地方の名所、ワン湖のほとりを走っていたのです。普段なら朝早く起きて一人で朝焼けを見に行こうなんてまず思いませんが、夜行バスにはこういう楽しみがあります。得した気分になります。実際ホテル代が1泊分浮くのでお得なのですが。
 ワンはイランの国境近くの湖と山のある美しい街です。ここの中心にあるワン城に上り上から見るワン湖と雪山は最高です。ワンには有名な左右の目の色が違うワン猫というのがいます。さまざまな民族が交わってきたこの国境を象徴するような猫ですが、率直な感想を言うと可愛いよりちょっと怖いです。ワン博物館はウラルテュ王国の遺物の展示では世界一らいいのですが、入ってみると、街のおじさん達がお茶をしながら雑談をしていました。今、改修中でたぶん秋ぐらいには直るだろうからまた来てくれという感じでした。他の博物館でもこんなことがありました。何とのんびりした国だろう。イスラムの国で博物館などにあまり期待しすぎるとがっかりするのでだめです。ここで見るのはモスクや市場、町並みです、それ自体が博物館みたいなものなのですから。

バスの中から寝ぼけながら見たワン湖の朝焼け 丘の上のワン城の上から見たワン湖と雪が残る山。塩湖であり湖岸船500km。近年怪獣を見たという話が広まったがまゆつばもの
ピデ(トルコピザ)の一種でラフマジョン。小ぶりで皮が薄くパリパリしている。 ケバブミックスを注文したら、羊、鶏、牛全てが出てきた。中でもお薦めが”パトルジャン・ケバブ”ナスの挽肉はさみ焼き。ナスがジューシーで、肉との相性が良い。
アジュル・エズメはビネガーを加えたすっぱ辛いソース。まさに南米のサルサのよう。トルコ料理はあまり辛い料理はないので、このソースをかけて辛くする。単調な焼肉とパンなどに良い。 ウズガラキョフテはパプリカの粉やクミンなどのスパイスを練りこんだ小さなバンバーグ。大きなししとうがアクセントに良い。
パプリカを干して売っている。トルコ料理にはかかせない。これがハンガリーに伝わってグーラッシュというパプリカのスープになった。 トルコは養蜂も有名。大きな缶に丸ごと入っている。これをブロックに切り分けてお菓子としてそのまま食べる。
肉市場。各店が牛、羊、鶏肉など専門を分けていた。足から内臓まで全てを使い切る。 子供のころから市場は親の仕事を手伝う場所であり、遊び場所である。血や脳みそや目玉を見ても驚かなない。
バターをたっぷり使ったパンを石釜で焼いている。 モスクはいつもひんやりとして涼しい。外界の熱気と喧騒からは隔離された避難場所でもある。異教徒の観光客も自由に入れる。

イラン国境越え
 ワンから国境を越えてイランへ、7時間の道のりでしたが、バスの車窓から見える谷間の川と草原の風景が美しく、時間を忘れるほどでした。所々に城跡があり、現在そこは国境警備隊が要塞として使っていました。途中バスから降りて1回軍隊の検問と、トルコの出国審査、イランの入国審査がありましたが、皆片言の英語で丁寧にスムーズに対応してくれました。国境の警備に当たって英語の上手な兵士はトルコの大学生で、今は2年の兵役中だと言っていました。検問や審査室を出るとバスが必ず待っていてくれます。置いていかれても困るので。実際中国の辺境で荷物だけ乗せてバスが出てしまったという旅行者の話を聞いたことがありますが。バスの中で現地の友達を作っておくと、気にかけておいてくれるので安心です。
 ちなみにお金のチェンジは国境の闇両替よりも、ワンなどの大きな町でやっておくのが良いです。今はどの国でも国境を越えた街にはATMがあり現金を出せますが、イランではカードもTCも基本的には使えません。現金のみです。社会主義国はこういうところが不便。

バンから国境越えのバスに乗る。外には美しい渓谷が広がる。目指すはイランの町ウルミエ。6時間 イランのバスはトルコに比べ少し古いが、乗り心地は悪くない。バスで同じ旅行者と仲良くなる。
昔の城跡、今は軍の見張り台。あまり自由に写真を撮らない方が良い。 トルコとイランの国境。両国の関係は良いので緊張感は無い。トルコ側には英雄アタチュルクの絵が、イラン側にはイラン革命のホメイニ氏の絵が。すごくわかりやすい。