チリ

 チリに来ると、南米よりも、まるでヨーロッパか北欧に来たような気がする、寒さ、発展した町、教養の高い人々。
日本人にとって人気が高いのは、暮らしやすさや、治安の良さだけではなく、何よりも南米一の海産物の宝庫だからである。
 カリブの国々も見てきたが、これほど魚介類が豊富な国は中南米では見られない。何よりも生で貝類が食べられる国は日本を含め、世界でも数少ない。それほど魚介類が新鮮で、しかもその保存や輸送など扱い方に長けているのである。

 プエルトモントのアンヘルモ市場。早朝に船が帰ってきて出荷が始まる。小さいながら、魚市場と食堂がひしめきあっている。ここでは鮭が安い、半身でも200円くらい。乾燥させない鮭の燻製も作られている。これも日本が養殖の技術援助をしたおかげと言われているが、定かではない。
写真右のように、掘っ立て小屋の食堂だが、隣から持ってきた新鮮な魚介類の料理、そしてワインが並ぶ。漁師達も仕事の合間に魚介類とワインを楽しんでいた。彼らは日本の水産業者を知っているとか、働いていたと言っていた。そのせいか、魚市場のレストランでは醤油やわさびを常備しているところもあった。チリの食べ方はオリーブオイルにレモン、トウガラシのサルサで。
チロエ島。プエルトモントからバスとフェリーで2時間くらい。
開発の進んでいないところだが、先住民族系の文化や不思議な神話や自然公園などが残っており、チリの中でも最も面白いところの一つと言える。ここの人々の作る木工品、民芸品には評価が高い。
 チロエ島の名物”クラント”は茹でたムール貝の上に鶏肉やベーコンの固まりが乗ったもの。具を取り出して、レモンやサルサで食べる。大雑把そうに見える料理だが、手作りの味のあるベーコンや新鮮な貝類がマッチしている。漁業に従事し、少ない食料を加工して暮らしてきたここの代表的な料理だ。リンゴを使ったどぶろくも有名。
左、市場でも乾物売り場。貝をこのように乾燥させて売っているのは中南米では見たことがない。鮮度が悪くあぶなくてできないのだろう。端にあるぶたの尻尾のような巨大な物体は海藻を乾燥させたもの。海苔のようなものもある。これら乾物の全てはスープに使われる。
写真右、”マリネーラ”の盛り合わせ。茹でるか生の魚介類にレモンと調味料をかけて食べる。ウニやカキを生で安心して食べられる国はチリぐらい。鮮度も大切だが、鮮魚を扱う輸送や調理技術、何よりも衛生的な環境が必要である。日本がそうである。またそれらがチリにもそろっている。
バルディビアの川沿いにある市場。切り取った頭や骨は川に投げ捨てる、それを鳥、アザラシが食べにやってくる。市場と動物園に同時に来ているようだ。陸にもアザラシが上がっているし、タマチャンどころのスケールではない。汚れた市場は水で洗われ川に流され生物のえさになる。合理的だ。頭や骨をスープに使わないのかと聞いたら、ここでは魚が捨てるように安いから、丸ごと一匹を使うと言っていた。納得。
 サンティアゴ(首都)の魚市場にて。魚市場ではここが大きさ、伝統共に一番ではないだろうか。カリブ海でもここまでの市場は見たことがない。ウニ、アワビ、ホヤ、巨大イカ、何でもあり。右の写真はそれらが全てミックスされた贅沢なマリネーラ、大量のレモンをかけて、玉ねぎコリアンダーが乗っている。シンプルだけど、これだけ材料の本来の味を楽しめる料理はない。市場の中のまさに直送の材料だからこそ味わえる最高の料理。ちなみに値段は200円くらい。
 チリのワインは非常に安く輸出品も多いので日本でも手に入る。アンデス山脈のミネラルを含み、水はけのいい土、からっとした気候が上質のワインを作り出す。写真右はチリの最大のメーカーconcha y toro「牛と巻貝」社、そのワインの一つにはcastillo de diablo(悪魔の城)という銘柄がある。名前の由来は下の記事参照。
 写真右は市内が展望できる丘にあるrestran camino real内にあるワイン博物館。チリの各地のワインが展示されている。有料だが試飲もできる。
チリの代表的な蒸留酒にピスコがあげられる。原産はペルーだが。ピスコはマスカットなど糖度の高く、栽培が簡単な安い葡萄から作られる。蒸留された後、フランス製の樽で数ヶ月、短期間熟成される。ブランディーと違い色が殆ど着かない。値段も安い。
写真左、チリ北部、エレキの谷にあるpisco control社ピスコ工場。博物館には初期の植民地時代に使われていた蒸留装置があった。実にシンプルだが合理的。
写真右、チリ最大のcapel社工場。見学者には試飲もさせてくれる。ここはピスコの原料マスカットでワインも作っていた。試しに飲んでみたが、やはり甘すぎた。

記事、チリの3大名物

  チリは南米を代表する3つの特産物があると言われます。一つはチリワイン、もう一つは海産物、最後にチリ美人です。
チリは南米一のワイン輸出国です、最近日本でも多くの種類が入るようになりました。その値段の安さと品質の良さに人気があります。その最大メーカー、コンチャ・イ・トロ(雄牛と巻貝)社を訪ねました。首都から車で1時間の郊外に美しい庭とボデガ(蔵)がありました。そこの一つの銘柄に"カスティージョ・デル・ディアブロ(悪魔の城)"があります。ビンには悪魔の絵が記されています。この名前には由来があり、かつて、領主の城でワインが作られ、その蔵で寝かされていた時代、しばしば、いいワインが盗まれていいました。そこである日、領主が悪魔の格好をして蔵に潜み、盗人を脅かしました。それからその城の蔵には悪魔が出るという噂が立ち、それ以後誰も盗みに入らなくなったとか。ちなみにワインの生産量はアルゼンチンがトップです。ただ、国内消費が多すぎて、輸出量が少ないとか。南米では水道水が飲めず、ミネラルウォーターを買わなければいけません。実際ワインの方が水より安いのです。ワインの消費量が増えるのは納得がいきます。
 2つめのチリの海産物はまさに南米一です。細長い国で、南は常に氷河があり、北は砂漠地帯が広がる非常に多様な気候を持ち、全てが海に面した、どことなく日本に似ている国です。その全ての街に船着場と海鮮市場があります。チリの市場は日本の築地などに比べると規模は小さいのですが、誰でも買いに来れ、市場の中に食堂があるため新鮮な魚介類がいつでも食べられます。朝に行くと漁から帰ったばかりの漁師達がワイン片手に海鮮スープを食べていました。彼らは、チリには水産業者や観光客などの沢山の日本人が来る、皆いいアミーゴ(友達)だと言っていました。そのせいか、店には醤油やわさびが置いてあり、日本語で「アワビ、ウニ、カキ、オイシイヨ」と声をかける呼び込みもいました。生でこれらの魚介類が食べられる国は南米ではチリだけです。
 3つめのチリには美人が多いのというのは実際に来て確かめてください。皆、とてもフレンドリーなのは確かです。
海産物も美味しい、平和で安全、美味しいワインもある、何処となく几帳面さや親切な国民性も日本人に似ていて、多くの在住の日本人がこの国の居心地がいいと語るのは納得がいきます。