エクアドル


 エクアドルはペルーのような遺跡郡や濃い文化は残っていないのですが、海岸にかつて奴隷として連れてこられ定住した黒人の文化、高地にはインカ系の先住民族、東のジャングル地帯には狩猟採集生活を続けてきたアマゾン系の先住民族が住んでおり、まさに全てのごった煮という感じです。
エクアドルには紀元前3500年前に南米最古のバルビディア文明がありました。ペルーのインカ諸文明とは違った独特の発展をとげました。
ペルーのチャンカイ文明の土器は日本の縄文式土器に似ていて日本との文化交流説もあるのですが、私にはエクアドルの諸文明の土器の方が獅子舞や日本の茶碗に似ているものもあり、非常にアジア的なものを感じさせました。ペルーのインカ系の土器を見すぎていた私にとってエクアドル諸文明の土器はすごく斬新で懐かしさを感じました。
 残念ながら、エクアドルではあまり美味しいという料理には出会いませんでした。バナナは美味しいです。
首都キトから西に3時間、その後乗り合いバスで一時間くらいの森の中に住むコロラードスという先住民族を訪ねました。彼らは髪を食紅で赤く塗るという習慣で有名です。それを調理にも使います。タバコの葉や薬草をお茶にしたり、蒸気にしてサウナをあびたりします。主食はプラタノ(調理用バナナ)で、川魚を主に食べます。そ
の為か100歳くらいの長寿の方もいるようです。中南米の先住民族の平均寿命は50歳前後と思われます。コロンビアのある街では若者が多く死ぬので平均寿命が30歳と言っていました。死因のトップが心筋梗塞でも癌でも無く、殺人というコロンビアでは本当のような話です。

 エクアドルの古都クエンカ。高地にあるためか、比較的涼しい。海岸部や首都に比べここら近辺にはチョーリータ(先住民系女性の愛称)さんが多い。

写真右はBandera paisa (国旗)。国を代表する料理が国旗の形に盛られている。まさに国民の魂ような料理だ。右の黄色いシチューはGuatitaで、胃袋とじゃが芋の煮込み、少しくせがある。プラタノは調理用バナナの揚げもの。必ずといっていいほど料理を頼むとついてくる。左はcarne seco肉の煮込み、少し味が濃い。ペルーの同名の料理は鳥のハーブ炒め煮であり、全く異なる。
写真左、南米最古と言われているバルディビア文化(BC3000〜BC1200)が起こったのがエクアドル太平洋岸付近である。日本の縄文式土器と非常に似ていることから、日本との交流を推測する声もある。多くをクエンカの土器博物館で見たが、ペルーのインカ諸文明とは全く異なっている。茶碗や獅子舞や文様などアジア的なものを感じる。左の人形はコカの葉っぱを噛んでいるもの。いかにも幸せそうな顔をしている。紀元前からコカが利用されてきた証拠。
写真右 クイ・アサード(天竺ねずみの丸焼き)。モルモットのようで小さい割りには高い。祝いの時の料理である。皮はパリパリしているが、骨が多く肉が少ない。
クイは普通、家の中の台所で放し飼いになっている。家畜家の歴史が長いので、寒いところでは生きられない。
 キトのコロニアル調の町並み。正面の丘の上にはキリスト像があるが、強盗が出るので上らない方がいい。

ジャピンガチョ、ソーセージにポテトのトルティージャがついてくる。くずすと焼きたてのじゃがいものようにホクホクしている。ソーセージを刻んで一緒に食べる。これを含め道端では油で揚げたようなスナックがよく売っている。
サチア族通称コロラードス族の村をキトから4時間バスを乗り継いで訪ねる。
 彼らはアチョテ・食紅を頭に塗る習慣を持つ。左の写真はアチョテを房から取り出し練ってから頭につけるところ。アチョテは料理にも色付けに使われる。川側の森の中で魚を中心に食べて暮らす。自然の薬草も食べる。その為か長寿の者が多い。最近若者の食生活がアメリカ型になって崩れてきていると嘆いていた。*1

右、動物市場で有名なオタバロ市、キトから北に2時間ほど、太ったクイが売られていた。他に鶏、子豚などが売られていた。子犬を買って、ボロ袋に頭からつっこんで持って帰るのには驚いた。もちろん食用ではなくペットだが。

 
 世界各地では長寿村に関心が高い。コーカサス、オキナワ、ブルガリア ETC、、、 エクアドルにも長寿と呼ばれる村があった。そこを調査したグループの興味深い報告があった。なんでも、5年ぶりにその村に訪れたら、長寿村の評判を聞いた欧米人のペンションが立ち並び、スーパーマーケットができ、町が整い、昔から食べていた伝統的な健康食品チーズも外国人に買いだめされ、現地人は安くて粗悪なものしか食べられなくなっていたという。もちろん、寿命も下がり、長寿むらどころではなくなってしまったという。これが5年くらいの間で変わってしまったのには現地人が気づかないうちに起こってしまう、食と生活の近代化と崩壊の恐ろしさを感じた。長寿や健康を保つには食事も大切だが生活環境が大切であることは言うまでも無い。