Greeceギリシア・Athens アテネ

 ブルガリア・ソフィアより夜行列車でギリシアに入る。列車の到着地点はテサロニッキ。大きな大学のある学生の町である。東のトルコや南のアテネへ抜ける交通の要所でもある。観光客が見るものはあまりないのでパスする。列車の駅の目の前にバスターミナルがある。朝6時、直通で乗り込む。学割がきくので6時間乗って2600円くらいとかなり安い。しかしギリシャの物価は数年前に比べて格段に上がったらしい。特にオリンピック相乗値上げがあったようだ。といっても他の西欧諸国に比べるとまだましである。
 ブルガリアに入ったときよりギリシャ語になり、文字と言葉が変わった。文字はΘやβなど数学の授業ででてきた文字なのでロシアなどのキリル文字よりかはしたしみがあるかもしれない。しかし何を話しているかはさっぱりわからない。



アクロポリスの丘からは市内が一望できる。登るものそんなに大変ではない。夜は閉鎖されていたが、横の岩場から見る夜景もすばらしい。パルテノン神殿はたしかに美しい。常に修復を行っている。こういう遺跡の周りは人に荒らされておらず、古代の植物の原種が発見されたりすることもあるらしい。菌類学者、南方熊久が熊野の神社の周りでコケを採取していた話を思い出した。
 6人の少女像が柱になったエクレティオンも美しい。半分は略奪され大英博物館にいまでもあった。返却交渉をしているそうだが。旧植民地エジプトからの品も多い。大英博物館で保護しているという面もあるが、いわば世界中から力で集めてきた略奪品博物館である。

右、クレタなどのギリシア諸島で発展した古代キュクラデス文明のオブジェ。酒を飲んでいる像。なにか素朴でユーモアがあり、心あたたまる。彼の「あー、ウめー」という声が聞こえてきそうだ。

町の中心部近く、風の塔からアクロポリスを見上げる。市内にいればどこからでも見えるパルテノン神殿、まさにアテネのシンボルとして人々の生活を見守っているといった感じである。
 岡の下には歴史地区”プラカ”がある。レスラン、土産屋、居酒屋”タベルナ”が並ぶ。ギリシア人の夕食は21時くらいと遅め。そのころが活気づく。モナスティラキ駅前には庶民の食堂が並ぶ。右はケバブ屋、元はトルコのものであるが、ギリシアでは独特のヨーグルトのソース”tzatziki”を中に入れる。串にさして焼いた羊肉をピタパンに挟むものはスブラキ。
プラカのオープンカフェ。手前は伝統料理”MUSAKA”。ジャガイモの上にミンチ肉のソース、その上にホワイトソースをかけて焼いたもの。ボリューム満点。食事どきに必ずといって出されるのが、ギリシア風サラダ。フェッタチーズがやまのようにのっている。味が濃い。ギリシア料理にはよく使われる。フェッタとサラダをピタパンに挟んだケバブなんかもある。
 サラダだけではなく煮た野菜もよく食べる。米などのつめものよくする。下記*2参照
 薬草主”OUZO”、カルダモン、アニス、シナモン、クローブなどのスパイスを漬け込んだリキュール。下記*4参照
 ギリシア料理にはオリーブとオリーブオイルは欠かせない。イタリアやプロバンス、モロッコなど地中海付近の国はどこでも栽培生産され料理に使われているが、ギリシアの種類の多さ、使い方は波ではない。市場では生の物、熟したもの、種をとったもの、ビネガーにつけたものなどいろいろある。
 右は中央市場の食堂で食べた朝食の一品、オリーブオイルをかけるというより、材料がオリーブオイルの中に浮いているという表現がふさわしい。中国の油で煮る鍋料理”水煮魚”を思い出した。

下記*1参照
 アテネの中央市場、アティナス通りをオモニア広場に向かうとある。朝は10時くらいから、昼に賑わう。私はパルテノン神殿よりこっちの方に感動した。アラブの市場のような喧騒と活気、怪しさ。ヨーロッパの市場のような衛生さと美しさ、それが一体となり完璧な市場を作り出している。西が野菜売り場、東が肉売り場、中央が魚市場。皮をはいだばかりのウサギや羊、脳みそ、生きたカタツムリ、他いろんなものがある。肉屋の解体はまるでショーを見ているよう。客の目を少し意識しながら鮮やかな手さばきで羊一匹をあっというまに解体する。客はどの部分がほしいというように要望を出す。ある子供が親に連れて来られて、恐る恐る市場を見て回っていた。子供のときかた食と命の関係を知ることができるのはすばらしいことだ。
 左、魚売り場、各店によって並べ方に工夫がある。ある店は魚の周りにフルーツや野菜をデコレーションしていた。日本人のセンスではまずできない。この店は子供が魚をさばいていた。子供のときからこうやって練習させられ、時期にいい職人となって店をつぐのであろう。
右、マルセーユの博物館で見た、フェニキア文明時代に素焼きの壷に入れて塩漬けにされ保存、交易されていた魚の漬物と同じものが今でも食べられている。そうである、地中海は陸を分断する海とう概念よりも船を運び交易を盛んにする運湖という感覚であったのはないか。*3 日本のある学者の、日本海とアジアとの関係もそうであったという説を思い出す。


食文化紹介

*1、ギリシアでは、高温で乾燥した風土にあった作物としてオリーブが古くから栽培され、料理にはかならずたっぷりのオリーブ油がもちいられる。また、トマトやナス、魚介類を多用するのはイタリア料理やスペイン料理と共通し、トルコ料理の影響が感じられる料理もある。
 ギリシャ料理の代表はナスのムサカ。ヒツジや牛のひき肉とタマネギをいためてトマトソースで煮こみ、うすく切って油で焼いたナスを交互に重ね、ホワイトソースをかけてオーブンで焼いた料理をいう。スブラキはヒツジ、牛、豚肉や魚をくしにさして炭火で焼いたギリシャの焼き鳥である。トルコ料理のドネル・ケバブをトマトやタマネギなどと一緒にピタパンでつつんだものが気軽に食べられている。

*2ドルマテス・イエミステスはトマトをくりぬいて調理した米とひき肉をつめ、オーブンで焼いたトマト料理の代表。ギリシャ料理では米がよくつかわれ、ズッキーニ(→ カボチャ)、ピーマン、ナスの詰め物料理や、米、ひき肉、野菜を、塩漬けにしたブドウの葉でつつんで煮、エッグレモンソースで味付けしたドルマダキアなどがある。

*3 地中海でとれる豊富な魚介類は、焼いたりオリーブ油で揚げたり、マリネにしたりする。
南フランスの魚介料理、ブイヤベースの元祖といわれるカカビアは、魚介類をたっぷりつかったスープで、ブイヤベースによく似ているが、ニンニクやサフランをつかわないためさっぱりした味である。魚介類、タマネギ、トマトなどを煮てオリーブ油、塩、コショウで調味する。古代ギリシャ時代、植民地だったマルセイユにつたわり、ブイヤベースになったといわれる。具とスープは別々に盛りつけられる。


 *4 食前酒として有名なのがオウゾ。アニスの香りがする40度以上の強い酒で、水でわると白濁する。タベルナとよばれる居酒屋は、酒とともにギリシャ料理をたのしむ人々で夜おそくまでにぎわっている。

タラモサラダは前菜につかわれる料理で、タラコのペーストと、パンをペースト状にしたものかあるいはマッシュポテト、みじん切りのタマネギとをまぜ、オリーブ油、レモン汁、塩で味付けする。

Microsoft(R) Encarta(R) Encyclopedia 引用