アリゾナ・ナバホ、ホピ族を訪ねる

 TV画面には荒野のトウモロコシ畑(グアテマラの湿潤気候とはあきらかに違う)。マノとメタテ(石臼とスリコギ)でトウモロコシを潰す女性、マヤぽいい顔つきといい、まさにマヤ系グアテマラ人を見ているようだ。その女性は青いトウモロコシ粉を水で薄く溶いて、薪ストーブの鉄板の上に手で広げた。それがクレープのように固まっていく、そして手で筒状に巻かれる。それが主食のように食べられる。また、石を入れた穴に薪を入れて燃やし、取り出してから、トウモロコシを入れて蒸し焼きにする方法もあった。太平洋諸島で行われるような方法だ。マヤ文化圏とは少し違う調理法だ。グアテマラでマヤ料理を調べていた者としてはぜひ訪ねてみなければと思った。
 出国間際の東京で、先住民族のイベントを手がけている知人からそのホピ族のビデオを見せてもらった。とりあえず通過地点としてロスに入る事は決めていたが、はっきり言ってアメリカに行く目的は無かったし、入りたくもなかった。半年前メキシコからトランジットしたときにキューバの飲みかけのラム酒を没収されたり、葉巻を疑われたりと、ろくな事がなかったからだ。ロスからすぐにメキシコに抜けようと思っていたときにホピ族の話を聞いた。しかし、その居住地が何処にあるのか、どやったら辿り着けるのかも知らなかった。いつか出会うべくしてその人に出会う、そしてそこに辿り着く、それが僕の旅である。辿り着けなかったらその時は呼ばれていなかっただけなのである。
 9月11日ロスIN。別にテロの日を選んだわけではありません。ただ安い席が空いていたもので、、、。
 ロサンゼルスIn→アリゾナ・フラッグスタッフ(グランドキャニオン・先住民族の聖地の一つ)→セドナ(聖地)→トュバシティ(ナバホ族居住区)→ファーストメサ(ホピ族居住地)→フェニックス(博物館先住民族展示)→ツーソン(アリゾナ大博物・館図書館、ホピ料理資料)→ノガレス(メキシコ国境)。
 というように、アメリカはアリゾナの先住民族を訪ねる旅となりました。中でも一番魅かれたのはホピ族です。彼らは中米で文明を築いたマヤやアステカの一派なのです。居住区を訪れて、ホピ族の人々と話したとき、グアテマラのマヤ系の人々と話しているような懐かしさを感じました。料理はトウモロコシを中心に非常に素朴なものです。
 ロス・テロ一周年であったが街は静かだった。日本でも追悼式展が各地で行われていた、出国3時間前の上野美術館でアフガン展を見ながら誤爆で無くなった一般市民の追悼式もやってほしいなと思った。ロスでは主にダウンタウンに滞在していたため、知り合うのはラテン系の人々、言葉はスペイン語と英語、美味しくて安い料理はタコスまたは中華街の点心。ハリウッドやビバリーヒルよりここの方がまだいい。アメリカ像が少し変わった。ロスから電車で一晩、アリゾナのフラッグスタッフというグランドキャニオン近郊の町を拠点に、ホピやナバホの聖地や居住区を回ることにした。レンタカーにて時速150Kmで砂漠を走ること4時間、やっとホピ族の居住区に辿り着いた。岩の台地にアドベ(日干し煉瓦)の昔ながらの家で暮らす人、キャンピングカーで暮らす人、普通の文化住宅で暮らす人々がいた。
あるホピ族の年配の男性と知り合った。かつて居住区に補助金と学校付で押し込められ、白人と同化するための教育を受けさせられた事、今は民芸品を伝えながら稼いでいる事。習慣も欧米化してきている事、ホピ族しか参加できない祭りがあることなど。そしてホピでは写真を撮ることを禁じている事。彼自身も人生で一度も写真を撮ったことがないし必要とも思わないと言った。旅行先で多くの写真を撮ることに夢中になる事、土産を日本に持ち帰る事、物に囲まれて暮らすこと、何が人間にとって大切な事なのだろうかと彼らの砂漠での質素な暮らしを見て一日本人旅行者として考えた。
 日本やアメリカのニューエイジの人々の間ではホピ族やナバホ族の暮らしや精神性が理想的と崇める人が多いらしい。先住民族に対する考えのギャップがあるように思える。グアテマラで働いていたときは、同僚や生徒達殆どがマヤ系先住民族であったし、下宿のおばちゃんがシャーマンであった、それが普通だった。そういう環境にいたから、アメリカ先住民が格別に珍しいとは思えない、メキシコやグアテマラの方が現在も色濃く文化が残っているように思える。食文化にしても豊に感じた。ホピ族の質素な食に学ぶ所もあるが。
結局は先住民族だから普通の人に比べて優れているとか特別とかではなくて、多くの中の一つの文化なのである。偏見の眼を持たずに互いの良いところを評価して学びあいたい。
最後にホピ料理の冒頭の文を紹介します。
「質素な料理は生活にも反映される。食は社会と環境、平和と共存のあかしである。」

左は有名なグランドキャニオン、コロラド川流域諸民族の聖地でもある。現在もこの国立公園西部にに住んでいる部族がいる。中央部は祭り以外では彼らは入れない。公園で働いている先住民系のガイドも一度も降りたことがないという。

右、聖地セドナ。キャニオンよりこちらの方が美しい。ヴォーテックスという磁気の出る箇所が4つある。街にはニューエイジの人たちが多く住む。
 フェニックスのハード・ミュージアム。展示物のまとめ方ではこの博物館が一番良い。ホピの人形の所有量もここが最も多い。付属の民芸品店では料理本が揃っていた。右はホピ族のホピブレッドと石のプレート、水がめ。
 右は強制的に白人化するための施設の展示。入校当日に丸坊主にさせられ民族衣装を脱がされた。過去の負の歴史が述べられている。


砂漠の中にウッパキ遺跡がある。ここがホピの原点となった。遺跡には必ずマノとメタテが見つかるのが、メソアメリカからのトウモロコシ文化を証明している。
左、ナバホブレッド、小麦の平べったいパンを揚げたもの。インドのナンを揚げたような感じ。ナバホステーキ、ナバホタコス、ナバホシチュー。これらは比較的新しい料理だ。

右はホピブレッドを砕いたものコーンフレークのように牛乳をかけて食べる。ほんのり苦味とじゃりじゃり感がある。これで腹が膨れるのだろうか。

訪れた西海岸の先住民族系博物館

ロスアンゼルス博物館:2Fにホピやナバホ族の展示が少しある。入門偏としては良い。無料

フラッグスタッフ、ノースアリゾナ博物館:街の北数マイルの岩地にある。トウモロコシが変異、改良すると共に文化が発展していった様子が実物のトウモロコシと共に展示されていた。小規模だが綺麗な展示。かつてのハリウッド映画のインディアン特集をやっていたのが興味深かった。店にはパンを作るトウモロコシの粉が売られている。
ホピ・ミュージアム:セカンドメッサ、ホピ居住区にある。ホピ族によって管理。館内は撮影、スケッチ、メモも禁止されている。小さな部屋に少ない展示。ただかつての居住区の暮らしの白黒写真がここのみで見ることができる。入り口でホピブレッドが売られている。ホピ料理の本もあり。
フェニックス・ハード・ミュージアム:上記のとおり、先住民の料理本を求めるならここのショップが一番。20$のハードカバーの本には野生の植物から料理まで細かく載っていた。ただし重い。

ツーソン・アリゾナ大学ミュージアム:大学の中にある博物館。展示は小規模だが、メキシコのタラウマラ族やヤキ族などを含め各部族を浅く広く紹介している。