新島とクサヤ

さすがにくさやの島というだけあって、小さな町の中に12件のくさや屋が密集している。島では老若男女皆くさやを食べている。子供の社会見学でもくさや工場を訪ねるとか。くさやが食文化として根付いている。

くさやとは
 伊豆諸島特産の魚の特殊な干物。ふつうのアジの干物などにくらべて塩けは強め、堅干しで独特のうまみがあるが、なによりの特徴はその異様ともいえる臭気。くさいから「くさや」といわれるように、焼くと隣近所にまでただようにおいは鼻をつまみたくなるほどだが、くさや好きには垂涎(すいぜん)のうまい香りである。とくに新島産の、クサヤモロともよぶアオムロアジやトビウオのくさやが高級品として知られる。サンマ、イワシ、小型のマサバなどのくさやもある。
 アジは腹開き、トビウオは背開きにして内臓をのぞき、きれいにあらって、くさや汁につける。つける時間は魚の種類、大きさ、季節によりことなるが、およそ12〜20時間。その後、簀の子にならべて水分が30%前後になるまで天日でほす。
 くさや汁のもとは塩分10%前後の塩水だが、とけでた魚の可溶性タンパク質やエキス分が発酵した特有の臭気と味があり、微生物も生きている。一度魚をつけたらしばらくやすませ、長期間使用しない場合は魚の切り身をいれ、塩や水をたして、微生物を生かしてくりかえし使いつぐ。
くさやが生まれたのは江戸時代。当時の伊豆諸島では塩が貴重品で、魚の塩乾物をつくったときの塩水をむだにせず、くりかえしつかったところからの偶然の産物である。くさやは江戸におくられて珍味となり、以来、江戸人、東京人がこのむ。伊豆諸島では昔は家庭でもくさやをつくっていた。先祖代々のくさや汁をうけつぎ、100年はつかいつづけてきている業者もあり、300年はもつといわれている。
 弱火で表(皮側)八分で裏二分に焼き、小さくさいて、酒の肴や茶漬けの具にする。さいて熱いうちに、酒をふりかけたり、醤油、酒、砂糖、酢などをあわせたたれにつけてもおいしい。最近は、焼いてほぐした瓶詰品もある。
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新島村博物館、建物も新しく、資料も充実している。古文書についても伊豆七島で最大の量を保管しているとか、くさやについての展示もある。年間を通して様々な企画やワークショップがある。 世界ではイタリアの島と新島でしか取れない珍しいコーガ石を使ったモヤイ像。モヤイとは島の言葉で”人々の結びつき”を意味したとか。本土の田舎で言うユイである。イースターのモアイ像に対して、新島のモヤイ像を作ったらしい。渋谷にあるモヤイ像も同じ親戚である。人々が集まる集合場所の目印に使ったのは意味からしても大正解である。
コーガ石を使った家、中国の合同(フートン)の古い建築スタイルのように見えるが、全く別。岩は軽くてモロイので傷がつきやすい。日本文化遺産に指定して、ぜひ保存してもらいたい。 コーガ石には78%ガラスの材料になるケイ酸が含まれているらしい。溶かすことにより、天然の美しいオリーブの色が出される。新島ガラスアートセンターにて
新島くさやセンターを訪ねる。ここにはくさやの水産加工共同組合により作られた工場で、現在7つのくさや会社のクサヤ液を保管し、魚が入るとくさやの加工がなされる。
丁度島のお母さん達が、魚を下ろしているところだった。一匹一匹丁寧に手作業でさばかれる。
発酵したくさや液に魚が1晩漬け込まれる。ためしに漬け汁を少し飲んでみる。どくとくの魚臭さはありつつも、それほどひどい味はしない。かつてはこの液からひきあげたままを焼いて食べる人もいたとか。魚の麹漬けを洗わずにそのまま食べる感覚だろうか。
使用後のくさや液は地下の保存庫に一旦回収、保管される。地下なので、夏場も温度が一定に保たれる。かつてはくさやを痛ませないように、魚の切れ端などの微生物のエサを与えていたらしいが、近年は貯蔵技術も高くなり、塩分のコントロールのみで大丈夫になった。 くさや作りの昔と今とでは一番変わった強制乾燥機。今でも伝統的な新島産のくさやは竹でできた網の上に乗せられて作られるので、魚の表面に竹のへこみがあるものがいいとか。

1 新島とは
新島 にいじま 東京の南方約151km、太平洋上にうかぶ伊豆諸島の島。新島の南西方約6kmにある式根島とともに東京都大島支庁新島村に属する。江戸時代は流人の島という歴史をもつ。面積は23.17km2。人口は2577人(1998年)。

II 地形と地質

おもに流紋岩で形成される火山島で、北部にある宮塚山と南部にある向山の2つの火山群が結合した、南北に細長い島である。両火山の間には東西に広がる低地があり、西海岸沿いには中心集落の本村地区がある。東海岸は白ママ層とよばれる火山灰土の海食崖と白砂海岸がつらなるが、北西部の湾に面した若郷地区周辺は玄武岩の多い黒々とした海岸で、対照的な景観をしめす。

III 産業

近世からつづく漁業は、現在も魚介類や藻類の漁獲量が高く、くさやの特産地として全国的に有名である。農業ではイモ類やキヌサヤエンドウが生産され、豚の飼育もおこなわれている。南部の向山西麓(せいろく)から産出される抗火石は耐火石材として知られ、以前より炉材や建築用石材に利用されてきたが、さらに近年になってタイルなどの窯業材料(新島長石)やガラス原料として活用されはじめた。

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