モロッコ

 スペイン南部からジブラルタル海峡を越えると、そこはアフリカの国モロッコ。ヨーロッパより一番近いアフリカ。しかしイスラム国であるため、アフリカに来たというより、中東のアラブの国に来たような錯覚を覚える。そうである、中世以前から北アフリカ、スペイン南部アンダルシアを始め、地中海はイスラム勢力が制覇していたのである。アンダルシアとここを見て納得できた。


ジブラルタル越え

 スペイン南端の港タンジェより船で一時間でアフリカ大陸・モロッコに到着する。アルヘシラス港に到着すると、人々はモロッコ各地へのバスや列車に乗りついでいく。入国審査も船の中でできるので早い。一方、アフリカ北端のセウタ港(スペイン領)にはスペインの町並みが残る。ユーロも使え、入国審査も無いのでスペインより一日観光には良い。モロッコに入るには出国と入国審査が必要で少し面倒、近くの街Tituanへは乗り合いタクシーで20分。
 ただ、ここらへんの港町は旅行者相手の客引きや、だましてふっかけてくるやからも多く、少し治安が悪いと言われる。どこの国でも国境の町や港は同じだが。

 モロッコの玄関口タンジェ、イスラム式のメディナ(旧市街)の迷路のような町と市場と喧騒にまず圧倒される。ヨーロッパとはかくも違うものかと。また、アンダルシア地方独特の白壁の家なども見られる。人々は共通語イスラム語とベルベル語、英語、フランス語(旧宗主国)、スペイン語などを使える。ここよりバスでモロッコの内陸へ向かった。
 右、スペインへの帰り、セウタへの国境。歩いてこのイスラム建築のイミグレーションを通り抜けるとそこはスペイン領。

フェス

 世界遺産にもなっている旧市街メディナの町並み。世界一複雑な街とも言われている。壁が迷路のように入り組み、そこに露店がひしめき合う。旧市街全てが市場と言ってもいい。モロッコには観光客が見る博物館や宮殿などは殆ど無い、モスクもイスラム教徒のみ、ここでの楽しみ方は、街を迷いながらうろつき市場や職人の工房や市民の生活を覗くことであろう。いいガイドもいるが、多くは絨毯工場などに連れ込まれ、ぼったくられる。特にモロッコの観光地でもぼったくりかたは観光地トルコと同じくすさまじい。5倍なんていうのもあたりまえ。イスラムの富めるものが貧しい者に与えるという教えなのか、商売は交渉が全て、騙された方が悪いという価値観なのか。

露店には非常に甘い蜜のお菓子やドライフルーツが山になって売られている。ラダマーン(断食)明けにはお茶と共にこれらの非常に甘いお菓子が出される。カロリー摂取のためだろう。

 モロッコの国民食、クスクス。デュラム小麦の荒引き粉を蒸して、その上に煮込んだ野菜や鶏肉などのおかずをかけて食べる。少しボソボソしているが、おかずの汁をしっかり吸い込んで美味しい。スパイスが効いてカレーのようだが、辛くはない。好みで唐辛子のソースなどを加える。
 左、街角にいくつもある水汲み場、人々はここで飲み水、料理用の水などを汲む。イスラムの街では中世以前より水路を作る技術が発達していた。砂漠の土地で、どれだけ水が生活に必要なものかが想像できる。

右、”タンジニ”は野菜と肉のスープ。平べったいアラブのピタパンと共に食べる。野菜をたっぷり使いオリーブを入れるところにスペインの影響が見られる。イスラムケバブ、アフリカのクスクスと言い、ここは食文化の交差点であったと言える。
イスラム圏モロッコではアルコールは普通飲んではいけない。現代人などで飲む人もいるが社会的に認められていない。そのかわりにミントティーを飲む。モロッコの国民飲料。
メディナを歩いていて見つけたパン屋、ピザ焼釜のような釜でさくさく平べったいピタパンを焼いていく、小麦やスパイス、トウモロコシ粉の配合によって色々な名前のパンができるらしい。違いがよくわからないが。おじさんの誇らしげな笑顔がいい。
 イスラムの朝焼けはコーランで始まる。薄暗いうちから始まり目が覚める。そしてコーランをここちよく聴きながら、イスラム国に来たのだと感じながら、再び眠りにつく。

ティトアン

 モロッコの北端、スペイン領セウタより最も近い街。フェスのような観光地でないためにうるさい客引きもぼったくりも少ない。特に観光名所は無いが、迷路のような市場を迷いながら歩いているだけで楽しい。ここは海に近いため魚も市場で売られている。魚は新鮮なのだが、地面に置いたり、汚い水に入れたりと衛生面に疑問があり、食べる気にはならなかった。

 丘に上がっていく途中の白壁の町が美しい。スペイン・アンダルシア地方の影響を受けている。丘の上から市内が一望できる。
 右、宿屋のおやじに招待されて食べた鶏のクスクス。三人で大きな皿を一緒に食べる。少し衛生的に心配であったが、非常に美味しかった。食後は1mほどある巨大で長いモロッコのメロン。
左、白壁の階段を下りる、買い物女性達。美しい、伝統的イスラム服とスカーフ”ブルカ”を着ける女性も多い。若い独身時代は着けなく、結婚したら着ける人が多いとか。着けている女性はより尊重され、男性は気軽に話したり握手したりできない。
 日が暮れると、酒場ならぬ、ミントティー喫茶へ男達は繰り出す。マリファナを吸いまったりしている者、ドミノで遊ぶ者、話に熱中するもの、ここはサロンなのである。
 酒は絶対に悪いもの、タバコもあまり良くなのでマリファナを吸いましょうという政府キャンペーンポスターを見かけた。たしかに欧米の若者のように酒を飲んで暴れたり、アル中になるよりましかもしれないと思えてくる。日本では厳禁であるが、我々や欧米の価値観で、彼らにいい悪いなどは決して言ってはいけない。


食文化
羊肉、牛肉、鶏肉をよく食べる。伝統的なモロッコ料理は、牛肉または羊肉をヒヨコマメ、レンズマメと一緒に煮こんだトマト仕立てのスープハリーラharira、牛または羊のひき肉を味付けして炭火で焼いたケフタkefta、アーモンドや野菜などさまざまな材料をつかった肉のシチュー、タジニtajineなど。小麦の荒びき粉を蒸し、その上に羊肉や鶏肉の入った野菜スープをかけた料理クスクスCouscousと魚もよく食べる。魚料理も各種ある。飲み物はミントティーが一般的。イスラム教では豚肉とアルコールを禁じており、なかには酒を飲む男性もいるが、社会全体にみとめられているわけではない。

Microsoft(R) Encarta(R) Encyclopedia引用