スウェーデン


 スウェーデンのレストランで今日のHusmanskost(家庭料理)というのを見つけたら、それを注文したら、最も安く、美味しい伝統料理にありつけることは間違いない。さらにサーディンをつまみに、スウェーデンの地元蒸留酒シュナップスを飲み、シュナップスソング(飲みの歌)を歌えば完璧である。
 スウェーデン人は質素で大人しい国民性、教育も福祉も非常に高い国、山あり森あり魚と海があり、、どこか日本と似ているかもしれない。
 それにしても物価が高い。アルコールやタバコも税金がかなりかかっている。酒は専門の販売店で成人である証明書を見せないと買えない。厳しく管理している。未成年が買えないのはいいことかもしれない。
 

 水路で囲まれた街ストックホルム。狭い路地と古い町並みが残る旧市街ガムラスタンが見える。市庁舎の塔の上より。階段の無い、通路を回転しながら登る塔。イスラム式と同じスタイル。かなり時間がかかる。

右、朝食で出る簡単なスモーゴスボードの一部。ドイツの朝食も同じくらいのボリュームだが、スウェーデンのものはニシンのマスタードや酢漬け、サーモンなど魚がついてくるのが嬉しい。下記*4参照
 北方民族博物館。スウェーデンの伝統的な生活習慣を紹介している。実際の上流階級の部屋や農家の部屋を再現するなど、充実している。左建物。博物館や民族村”スカンセン”が集まるゴールゴーデン島の入り口にある。
 右写真、発酵学研究者・小泉武夫氏の著書にもよく登場する。世界三強臭い食べ物の一つ”スールストレミング”右写真は博物館の中のレプリカ、本物は臭くて展示はできないだろう。下の食文化紹介*1参照
左、蒸留酒”シュナップス”と”クリスプブレッド”少し硬い大麦のクラッカー、チーズやニジンなどを乗せて食べると美味しい。昔から彼らの重要な保存食となってきた。保存時は薄く円盤状に焼いて、真ん中に穴を開けて屋根にぶらさげていた。*2参照。
右写真、パン屋で見つけた大型のザリガニパン、ザリガニのテーブルクロスと共に。このように8月になると街のあちらこちらでザリガニ模様が目につく。本物のザリガニは一匹300円くらいしたので、結局食べずじまい。中国の南方だと大鍋一杯食べられるのに。

食文化紹介

*1 かつて、貧しい時代には非常に塩辛いニシンの塩漬けが保存食とされていた。同じく、GRABLAXというサーモンの塩漬けもスウェーデンの伝統食である。塩が高く充分に使えない地方で、大量に獲れた鮭を地中に埋め(grave)、腐らせず少量の塩で発酵させ保存食とした。現在は塩分も少なく、発酵も抑えてある。発酵魚として強烈なのがSurstremingである。発酵させたニシンを缶詰にしてさらに1年熟成させビンテージ物とする。缶は破裂寸前まで膨らむ。

*2 伝統的なパンの種類について面白い特徴が見られた。
 中世、北部のパンは大麦の粉を発酵させずに焼いた平べったいパンだけであった。北部では大麦しか栽培できなかった。大麦のパンは膨らまない。インドのチャパティのよう。中部では秋と春のみ風車を回転させる水が得られ、その時期に粉を挽いてクリスプブレッドを作った。薄く焼いたクリスプブレッドは天井に吊るして干して半年間の保存食とした。さらに最南端のデンマーク領であった場所では風車で小麦粉を挽いて一年中柔らかい城パンが食べられた。
moesosはチーズを作った残りのホエーをさらに茹でて作るホエーチーズ。全ての材料を無駄にしない知恵であった。

*3 ザリガニパーティーはは8月夏の名物である。街の各地でザリガニの模様のフキンや皿や置物が見られる。野外で満月を見ながら茹でたザリガニの身をすすり食べながらシュナップスを飲む。この習慣は100年前に役所が秋の数ヶ月を除いてザリガニの禁漁をしたことから始まった。当時スウェーデン名産のザリガニはフランスやデンマークの高級レストラン用に乱獲されていたためである。以後、夏の終わりには禁漁の解禁のお祝いをするようになたのである。しかし1907年のザリガニ伝染病の流行によりスウェーデンのザリガニはほぼ無くなった。以後スウェーデンはアメリカなどからザリガニの最大の輸入国となった。現在も高価なザリガニを人々は楽しんでいる。

*4 地元の人達は、外国人相手のホテルでの夕食ビュッフェ”Sumogos Bord”をしょっちゅう食べているわけではない。外国人がこれをバイキング料理と呼ぶが、11世紀〜14世紀にヨーロッパの海で暴れたバイキングとは全く関係が無い。Sumogos bordは最初はオードブルとウォッカを2,3杯飲むというロシア式の食事から始まった。18世紀にスウェーデンの上流階級に取り入れられ、”シュナップス・テーブル”と言われていた。それに暖かい料理などが何品も加わりsumogos bordになった。ちなみに北欧の豪華なホテルなどでは毎日山盛りの前菜類が並ぶがそれはあえてsumogos bordとは呼ばない。もちろん地元スウェーデン人の朝食はパンとチーズ、ヨーグルトなど質素なものである。

 
参考文献;「メイポールとザリガニとルシア祭」日本語版 スウェーデン文化交流協会発行