食遊記東南アジア編
はじめに
泥だらけの笑顔で子供達が駆け寄ってくる。1年ぶりの再会なのに僕の名前を憶えてくれていた。「コータ、コータ!」それ以上は言葉が通じなかった。そしていらなかった。大人達も同じように屈託の無い笑顔で迎えてくれる。身振りで会話をする「一緒に飯を食わないか?酒飲め。具合はいいか?恋人はいるの?いつ今度は帰ってくるんだ?」。こんな遠い異文化の国で言葉もろくに通じないのに共に働き、生活を送ることができる。やはり同じ人間同士なのだと実感する。
日本に帰って忙しい日々をすごしていても、アジアの子供達、友人の笑顔が目に浮かぶ。時がゆっくり流れていた。経済的な貧しさはあっても人間的な豊かさはあった。そこには日本が経済成長するときに置き去りにしてきたものがあったのかもしれない。そしてまた僕はアジアへ引かれ戻っていく、、、、。
アジアに関わってはや5年が経った。十数カ国を訪ね、タイには毎年行っている。しかし知れば知るほど奥が深く、謎が深まる。アジアについての定義化や体系化する事は難しい。いわば全てが混じり合っている、混沌、無秩序、活気が似合う。それらが無理に画一化されたら無味乾燥で合理的な近代都市にしかならない(シンガポールや日本が向かうように、、、)。
東南アジアの食文化はかつて擂り鉢とスパイスの様にインドから影響を受け、その後箸や米、麺の様に中国から影響をうけた。そしてその起源は中国雲南省と言われる、ニンニクや生姜の香草を使いタイやラオス料理の原型となった。味噌や納豆や豆腐も作ることから日本の発酵食文化の基ともなった。文化はそれぞれに影響し合って形成される。東南アジアは陸続きでもあり混ざり方が著しくそもそもそれをこの国は何料理とはっきり区切ろうというほうに無理がある。国であれ、民族であれそうだということに気づかされた。
僕が解説するのもその国の食文化の代表的な部分にすぎないと理解していただきたい。そして何より自分の目で見て、食べてその奥深さを体験してもらいたい。
食遊記第一弾豪州編も好評で第二弾東南アジア編を出すこととなりました。99年秋に回った6カ国の最新情報と共にかつての記録を元に書きました。インド、ネパールや中国、韓国など他のアジアの国々も紹介したかったのですが都合上割愛いたしました。また次の機会にしましょう(たぶん、、、、)。
食遊記は食文化をテーマに食べ、遊び、放浪を続ける料理人がその国の食から文化、習慣や社会を紹介するものです。料理本ではありません台所で読む必要はありません。
絵と写真と文:放浪料理人コータ
PS:この文章は広島廿日市国際交流協会の援助により完成、出版した冊子用の原稿です。原本の各ページには写真と絵が入っていました。現在再販できる機会を探しています。ご了承ください。
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