パラグアイ共和国


ひたすら続く青空、赤土そして緑。それがパラグアイのイメージ。イグアスの滝のような大自然やインカの遺跡があるわけでもない。ただひたすら赤い土と平らな大地が続く国。普通の旅行者は殆ど訪れない。来たとしても、首都の町並みを半日見て通過するだけだろう。のんびりが似合う国、暑い午後にはテレレを回しながらゆっくりと語り合う国、なによりもここは南米一平和な国なのだから。

テレレとは、
 yerba mate(学名 Ilex paraguariensis A.Sant.Hill.)、現地の人は単にイエルバと呼ぶ。いわゆるマテの葉っぱをグアンパという壷とボンビージャというスプーンの形をした吸水器(ストロー)で水を加えて飲む冷たいお茶。パラグアイ人は壷とテルモという魔法瓶に氷を入れてしょっちゅうこのテレレを飲んでいる。客が来たときや仲間と休憩をとるときは、一つの吸水器と壷を水を足しながら回して飲む。決して吸水器の口を拭いたりはしない、それが仲間を信頼することであり、一体感を生む方法なのである。日本の諺で言えば「同じ釜の飯を食う」であろうか。また、この容器で飲みながらゆっくり話をすることにテレレをする意義がある。中国で言う飲茶(ヤムチャ)がただお茶を飲むだけではなく茶菓子を食べながらゆっくり朋友(パンヤオ)と話を話を楽しむことを意味すると同じような感覚である。心と時間の余裕が作り出す嗜好文化といえようか。
ちなみにマテ茶というと暑いお湯をかけて飲むもの、アルゼンチンのような寒い国が本場なのでその項で述べたい。

左、イェルバ(葉)にもいろいろなメーカーのものがある。葉っぱだけのものから、ユヨ(薬草)がメーカー独自の方法でブレンドされているものもある。一つ1000グアラニー(15円)くらい。カップ一杯と冷水で数人の客を持て成せるのだから、最も安上がりで最上の持て成しだと現地人は言う。この葉をテレレ(冷)にもマテ(温)に使ってもいい。
右、 グアンパとボンビージャ。庶民の使う3$くらいのもあれば、銀でできたものや牛の角をくりぬいたものなど色々ある。パラグアイ人の家に行ったら必ずある。
葉を入れてから少し傾けて振って、そこにボンビージャ(吸水器)をつっこむことにより、吸水器より離れたところに細かい葉をやり、詰まることを防ぐ。吸水器によっては穴が大きく、葉がかなり口の中に入る。だがそれが逆に葉の食物繊維を摂取することになり健康にはいい。緑茶でも葉を時には葉を食べる習慣があるように。
右、旅の途中に会った青年。右手にはテレレの容器が左手には大きなプラスチックの魔法瓶が大切に握られている。他に荷物は無い。かさばるし重そうだ。しかしパラグアイ人は職場に仕事道具は持っていかなくてもこれは持っていく。中国もビンにお茶の葉とお湯をそそいで持ち歩く人もいたが、大きさではパラグアイの勝ち。
ユヨ(薬草)売り場。
一見、野菜売り場のようだが、全て、半乾燥か乾燥した薬草類である。
 野生に成っている薬草を見つけてとってくるそうだ。客は好みで薬草を選び、臼でついてブレンドしてもらい家に持って帰ってイェルバ(葉)にまぜて飲む。水で抽出できるものはテレレ、お湯のものはマテとして使用。客もどの薬草がどのような効用があるかを知っている。それをテレレでしょっちゅう飲むのである。化学薬品のように即効性は無いが、副作用もなく生活習慣病の予防にもなる。東洋の漢方の考え方から見ても理にかなっている。全てグアラニー族の知恵である。

ユヨ(薬草)の一般名と学名と効能。ここに揚げたのは、ごく一部である、日本に知られて、整理されているものでも200種類、他未知のものも含めると数多くあると思われる。

Azafran, (Carthamus tinctorius L.) サフラン、水で抽出、肝炎に効く
Boldo (Peumus boldus Molina.)、水はたは湯で抽出。 消化薬、便秘解消、 肉を多食するパラグアイでは必須、女性に痩せ薬としても人気。
Canela(Cinnamomum sp.)シナモンの葉、湯で出す。下痢、鎮痛、やせ薬。
Granada(Punica grantum Linn.)ザクロの外皮、湯で抽出。下痢止め、赤痢
Higo(Ficus carica Linn.)イチジクの葉。湯で抽出。ぜんそくに効く
Girasol(Helianthus annuus Linn.)ひまわりのタネ。湯で抽出。
paratodo(Tabebuia caraiba Mart.)。樹皮、直訳すると「全ての為に」。下痢止め、やせ、傷、赤痢、打撲、まさに全ての万能薬。
Rabano(Raphanus sativus Linn.)二十日大根の全草。湯で抽出。胃もたれ、軽い下剤、たべすぎ。

パラグアイ国、日本国際協力事業団、85〜88年調査、出版 「パラグアイ薬草写真集」より抜粋。


「究極の自然やせ薬」、ボルドーという薬草は消化や便通作用がある、肉を多食するこの国では食後に私も利用している。そのボルドーに他の強い薬草をまぜたのがやせ薬「PLAN30DIAS」、30日計画で痩せるというハーブティーなのだが、これが効きすぎるのである。ある女性はこのティーを一杯飲んだら一晩中トイレに通わなくてはならなかった。私は肉を食べ過ぎたとき、これとマテ葉を混ぜて薄めて飲むことにしている。


パラグアイ料理

写真左、CHIPA。道端、バスの中、何処でも売られている。これをパラグアイ人はよく食べる
。チーズの味がする硬めのドーナツ状のスナック。丸い形もある。
写真右、Chipa Guasu、トウモロコシ荒く挽いたものでカステラのようなケーキをつくる。甘くはない。
とうもろこしで作った料理が目立つ。グアラニーの文化にとってトウモロコシがどれだけ大切なものだったかわかる。同じくマンジョッカ(キャッサバ)の茹でたものも食べる。
写真左、BOL・IBOLI、スープの中にトウモロコシ粉の団子が入っている。いわゆるすいとんのようなもの。BOLA(団子)から、この名前になったらしい。
写真右、sopa paraguaya、普通ソパというとスープを意味するがこれは違う。というのも、ある人がコーンスープを作ろうとしていて、失敗して煮詰めすぎて焦がしてしまったらしい。その固まりを食べたのがこの料理の始まりという説がる。中はしっとり柔らかく、中に玉ねぎが入っているところが、チパグアスと似ている。写真はアスンシオンの老舗LIDO BARのもの。一番美味しかった。
左、市場で売られていたアルマジロ。ニカラグアなどの山岳部で食べる習慣があった。ここでもかつて半狩猟採取で暮らしていたグアラニー俗の習慣の名残だろう。アルマジロの肉は繊維質が多く、若干の臭みがある。

右、メルカドの屋台の典型的な?!おばちゃん。手に持っているのは具の入った平たいオムレツ、ここではトルティージャと呼ぶ。メキシコ、グアテマラでは主食のトウモロコシの平たいパンを示す。

連載記事 「グアラニーの国、パラグアイ」

 南米パラグアイではスペイン語の他に先住民族グアラニー語が公用語として認められている。先住民族の言葉が認められ、義務教育で教えてられる国は聞いたことがない。日本でも沖縄で琉球語や北海道でアイヌ語が義務教育の現場で教えられたことがなかったように。他の中米では先住民族はどちらかと言えば妨げられる存在であり、白人に近いほど階級的には上という認識がある。しかし、パラグアイ人はグアラニーの血を誇りに思いそれをアイデンティティーの一つとしている。仕事にしろ、スペイン語だけでグアラニー語が全く分からないと不利になるらしい。しかし、生粋のグアラニー族というのはもう殆ど残っておらず、文化も消失しかかっている。せめて言葉だけでも残したいという思いがパラグアイ人にはあるのだろう。
私がパラグアイの食文化で特に注目したのはマテ茶とそれに使う薬草である。アサード(焼肉)が国民食であるように肉を多食する文化であるが、アルゼンチンのようにワインを作っているわけではない(赤ワインのポリフェノールはコレステロールによる脳卒中などの疾病を防ぐ)。その変わりとして、マテ茶をよく飲む。日本の緑茶のようであるが、ミネラルが豊富で葉っぱをいくらか飲み込むから繊維の補給にも役に立つ。そこに様々な薬草を調合したものを加える。風邪に効くもの、鎮痛作用のあるもの、便通作用のあるもの。私は消化作用のある薬草をいつも使っていた。グアラニーの人々が使っている薬草は知られているだけで200種類以上。すごい知恵である。客も市場の薬草売り場にどれとどれを混ぜてほしいと注文する、多くの人が薬草に通じているようだ。
冷やしたものを特にテレレと呼ぶ。職場に行くときもこのマテ茶の葉と銀ストロー付の容器、そして氷水を入れた魔法瓶を持って行くのである。農作業の合間に木陰でテレレを回しのみしているのをよく見かける。一個の容器をストローで回しのみする。口元を拭かないのが礼儀であり、お互いを信頼しているということになる。何よりも「同じ釜の飯を食らう」的な仲間意識が生まれる。
最近、若い人はテレレよりコーラなどの砂糖たっぷりの炭酸飲料水を飲み始めたという、健康障害が出ないか心配だ。
私もマテ茶と容器を片手に持って旅を続けます